文献 : 聴力障害

ディスコ・コンサート

Auditory thresholds in young Italians from 18-19 years of age

Merluzzi F, Med Lav. 1997 May-Jun;88(3):183-95. Italian.

この研究の目的は、疫学調査と、若者の音楽に対する考え方・音楽の聴き方・騒音による聴覚障害に危険性の受け止め方を評価するための質問紙法により、若年のイタリア人被験者における聴力レベルの状態を評価することである。調査対象者は、兵役のために健康診断を受けた391名の若者とした。聴覚閾値は、ISO 6189の方法で、ISO 389によって較正された防音イヤホンを用いて、臨床に準じた聴力検査法によって評価された。最終的に315名の若者が研究に適していると判断され、そのうちの81%がミラノに住んでいた。63%は週に1~4回ディスコに行き、3%は最大音量でイヤホンを使って音楽を聴いていた。ディスコから帰る若者には、聴覚の疲労所見(聴力レベルの低下:7%、耳鳴り:37%、音のこもり:12%)が観察され、こうした状況は、聴覚に対する潜在的リスクとして考えられている。研究対象者から、環境騒音が、睡眠を妨げる要因になっている(13%)、勉強や読書の妨げになっている(43%)、ラジオや音楽を聴いたり、テレビを見る妨げになっている(29%)という結果が得られた。7名の若者は、自分の聴力は正常ではないと回答し、聴力検査のゼロ点よりも閾値が高かったが、これは文献上の報告されている他の類似の研究で観察される値よりも明らかに悪かった。この研究では、左右それぞれの耳で聴覚閾値の平均値、標準偏差、分布の最大値・最小値・百分率について報告している。比較は最小ばく露群における聴力に対して行われ、右耳のみ有意な差が認められ、左耳は傾向を示すのみであった。筆者らは、今日の若者の聴力は以前よりも悪くなっており、原因が何であろうとも、すべての状況・どんなレベルの騒音による聴力障害に対しても有用な予防プログラムにより、この事態に対処すべきであると結論を出した。

Hearing loss due to leisure time noise is on the rise. The ear also needs a rest period

Eggemann C, MMW Fortschr Med. 2002 Dec 5;144(49):30-3. German.

余暇の騒音による一時的および恒久的な聴力低下が増加しており、その犠牲者の多くは青年や若者である。感受性の高い聴覚器は、恒久的なばく露を許容できるものではないため、有害性が顕著である。14~20歳頃の若者は、平均して3時間以上音楽を聴いて過ごしている。ヘッドホンで音楽を聴くのと同様、ディスコ、特にコンサートでは、騒音ばく露が100dBあるいはそれ以上に達することが普通であり、90dBの騒音ばく露は確実なリスクであるという認識が既になされている。しかし、騒音は120~140dBのレベルで不快感や苦痛を感じさせるものであり、これは有害性を低く見積もらせる結果となっている。聴力低下の治療は、急性期か慢性期かによって決まり、静注療法、ストレスの低減、聴覚の安静や、適切な補聴器の作成が望ましい場合は騒音から離れる時間をつくること、などがある。経済、公衆衛生、社会において、聴覚障害にとって極めて重要な意義をもっているのは、予防(保護だけでなく予防も)であり、より関心が向けられるべきである。

ディスコ難聴とその周辺 アンケート調査のまとめ.

佐藤恒正, Audiology Japan, 1986. 29(3): 171-182.

全国の大学および主要病院の耳鼻咽喉科40施設よりアンケート形式によるディスコ難聴83症例について検討した。罹患年齢は20歳代に多く原因は、コンサート39%、ディスコ26%、ヘッドホン17%であった。聴取音楽はロック音楽が大半を占め、ばく露時間は平均3時間が多かった。聴力型はdip型が最も多く、低音障害型も多く認められ、補充現象は陽性であった。予後は若年者、dip型において良く、年長者、低音障害型において不良であった。

大音圧の音楽聴取による難聴.

小野博,日本音響学会誌, 1986. 42(6): 467-473.

ディスコ難聴と総称される、ロックコンサート、ディスコ、ヘッドホンステレオなどによる難聴には、演奏者やミキサーなど音楽関係者の長期間蓄積の固定化したもの、強大音圧が引き金になって発生した突発性のもの、一過性聴力損失の回復過程でその後回復するもの、の三種がある。これを生ずる背景因子、聴力障害の特徴、治療結果につき概説した。職業性難聴、公共施設における音圧規制、音楽聴取による難聴の予防と早期治療の必要性につき述べた。

音楽性強大音のレベルと騒音性難聴.

小野博,産業医科大学雑誌, 1986. 8(特集): 151-161.

ノイズバッジと名付けた超小型の環境騒音測定装置を試作し、実際のディスコやロック音楽、騒音工場において、長時間の個人別ばく露騒音量の測定を行った。これらの強大音と一過性聴力損失(NITTS)との関係をディスコおよび防音室における強大音ばく露のシミュレーションについて調べた。個人別のヘッドホンの最適な音量聴取レベルを音楽の種類別に環境音を考慮しながら測定し、音楽強大音と難聴との関係について検討した。

聴覚と難聴疾患 9 騒音性難聴とディスコ難聴.

猪忠彦,医療, 1986. 40(9): 873-876.

騒音により種々の影響をこうむるが、なかでも強大な音響にさらされると難聴が起こることは良く知られている。その難聴の起り方や刺激の加わり方から騒音性難聴は急激に発生するものと緩徐に発生するものに分類されているが、最近特に問題となっているヘッドホン難聴、ディスコ難聴、超低周波難聴を含めその成因、発生予防について検討した。

市民生活において発生した急性騒音性難聴.

佐藤恒正, Audiology Japan, 1992. 35(2): 178-186.

市民生活において発生した急性騒音性難聴は、過去10年間に108例経験したが、その中よりディスコ難聴(71例)を除外した症例の内容は、パチンコ遊技中(5例)、ピストル試射中(4例)、ヘッドホンを装着したまま睡眠中(8例)、小児が音の出る人形で遊んでいる中(1例)、小児のジャズダンス練習中(1例)に発生した症例である。難聴発生にはディスコ難聴同様に外因の他に内因、誘因が関与した。