文献 : 聴力障害

その他(酪農家、集中治療室、石油プラントなど)

Noise-induced hearing loss in randomly selected New York dairy farmers.

May JJ, Am J Ind Med. 1990;18(3):333-7.

畜産業に関連した騒音レベルの影響をより理解するために、土着している人たちの中から49名の常勤酪農家を無作為に選定した。病歴および職業歴を聴取し、純音聴力検査を実施した。平均年齢43.5±13歳、農業への平均従事期間29.4±14年の46名の男性(94%)および3名の女性(6%)に検査を行った。0.5kHz・1kHz・2kHz・3kHzの純音平均閾値(PTA4)にくわえ、3kHz・4kHz・6kHzの高周波平均閾値(HFA3)を算出した。一方の耳で20dBまたはそれ以上の損失のみられた被験者は、基準外と判断した。18名の被験者(37%)はPTA4が基準外であり、32名(65%)はHFA3が基準外であった。両群とも、左耳がより強い障害を受けていた(P≦0.05、T検定)。聴力低下と労働時間の間(オッズ比4.1、r=0.53)、聴力低下と年齢の間(オッズ比4.1、r=0.59)に、有意な相関がみられた。聴力損失と麻疹・流行性耳下腺炎・耳の感染症の既往、動力工具・銃・オートバイ・スノーモービル・ステレオヘッドホンの使用との間には、関連はみられなかった。酪農家における今回のデータは、とりわけ高周波帯においてかなりの聴力低下が生じていることを示している。老年性難聴は重要な交絡因子である。

Combined effects of hand-arm vibration and noise on temporary threshold shifts of hearing in healthy subjects.

Zhu S, Int Arch Occup Environ Health. 1997;69(6):433-6.

【目的】健常人において、手腕振動と騒音による一過性閾値変動(TTS)の複合効果があらわれるかどうか確認すること。

【方法・デザイン】平均年齢25.7歳(標準偏差 7.7)の19名の健常人に、それぞれ、振動(30m/s2、60Hz)、騒音(90dBA)の両方にばく露させた。被験者の右腕を振動器のプレート上におき、右耳にヘッドホンを通じて騒音をばく露させた。被験者は、振動かつ/または騒音に3分間ばく露され、1分間の休憩の後、ばく露を繰り返し5回行った。ばく露前・ばく露中(休憩中)・ばく露後に、1kHz・4kHz・6kHzの聴覚閾値の測定を行った。

【結果】振動単独のばく露では、すべての周波数において聴覚閾値の変化はほとんど認めなかった。一方、騒音単独あるいは振動と騒音の両者のばく露では、4kHz・6kHzのTTSが有意に引き起こされていた。さらに、振動と騒音の両者のばく露では、騒音単独のばく露よりも4kHz・6KhzのTTSが有意に大きく引き起こされていた。

【結論】この結果は、手腕振動と騒音の複合効果により両者へのばく露、TTSの程度を強くすることを示唆している。

Use of active noise cancellation devices in caregivers in the intensive care unit.

Akhtar S, Crit Care Med. 2000 Apr;28(4):1157-60.

【目的】近年の騒音消去装置の発達は、集中治療室の環境下における騒音を軽減できる可能性を示唆している。この研究は、集中治療室の介護者による主観的な聴覚評価において、騒音消去装置の効果を評価するために実施された。

【デザイン】無作為二重盲検法。

【設定】 教育病院(teaching hospital)内の成人内科系集中治療室および小児集中治療室。

【対象】集中治療室内の看護師・両親・呼吸療法士・准看護師等の患者の介護担当者を対象とした。

【介入】対象者に、最低30分間、騒音消去装置の機能のある/ないヘッドホン着用するように依頼した。

【測定】各被験者の主観的な環境騒音レベルは、ヘッドホンを使用する前と使用中に、10点の視覚的アナログ尺度(VAS)で評価された。ヘッドホンの快適性とヘッドホンを着用した介護者の好みも同様に10点の視覚的アナログ尺度で評価された。同時に、騒音の客観的計測には、各病床の騒音レベルと9つのオクターブ帯域による騒音計測を行った。

【結果】騒音消去機能のあるヘッドホンは、騒音レベルおよびオクターブ帯域評価に基づいた均等な客観的騒音環境において、騒音に対する主観的評価を2点(10点満点のVAS)減少させた。

【結論】騒音消去装置は、介護者による騒音への主観的評価を改善させた。聴覚障害におけるこれらの装置の利点は、介護者や重篤な患者について更なる評価が行われる必要がある。

Occupational noise exposure and hearing loss of workers in two plants in eastern Saudi Arabia.

Ahmed HO, Ann Occup Hyg. 2001 Jul;45(5):371-80.

【目的】職業性騒音ばく露に関連した聴力障害の有病率と他のリスクファクターを同定すること。

【デザイン】無作為に選定された269名のばく露者と99名の非ばく露者(職業性騒音ばく露のない者)による横断研究。その時点での騒音ばく露は、騒音計と騒音ドーズメータを使用して推定された。過去の騒音ばく露は、面接調査票により推定された。各対象者に対して、耳鏡検査と標準的な周波数帯(0.25~8kHz)の聴力検査が聴力障害を評価するために行われた。

【結果】ばく露群の75%(202名)は、日常的に85dBの許容基準を超えた等価騒音レベルにばく露され、その61%は防音保護具を着用していなかった。両群で、両側かつ対称性の聴力障害がみられた。二変量解析で、ばく露群は非ばく露群に対して4kHzのdipを伴う聴力障害が有意に多かった。ばく露群の38%で聴力障害がみられ、その割合は非ばく露群よりも8倍高かった。多変量解析では、騒音のばく露が聴力障害の第一要因であり、年齢が第二要因であった。聴力障害のオッズ比は、防音保護具を着用しているばく露労働者群(19名)で低く、ロジスティック回帰分析において、防音保護具を着用している労働者の割合は、騒音ばく露・教育・防音への意識により上昇していた。聴力障害は、カセットテープを聴くためにヘッドホンを使用している人に多かった。

【結論】 騒音への職業性ばく露が聴力障害を引き起こすことは明らかであり、筆者らは、サウジアラビアにおける職業性騒音障害が広範囲に及ぶ問題だと考えている。騒音評価と騒音コントロールのための戦略が職場環境を改善するために取り入れられている。

Observations of noise exposure through the use of headphones by radio announcers.

Williams W, Noise Health. 2003 Apr-Jun;5(19):69-73.

この研究では、民間のラジオアナウンサーの聴力低下の潜在的リスクを調査した。このリスクは、ヘッドホンの常用により生じた。これらのヘッドホンは、番組の放送の監視やプロデューサーからの情報伝達に使用された。私たちの知る範囲では、ラジオアナウンサーの騒音ばく露の研究は報告されていない。使用中のヘッドホンと平行にしたヘッドホンを広帯域型の人工耳にとりつけた実験方法で行った。騒音レベルを測定し、ばく露レベルを算出するために騒音計を使用した。ヘッドホンからの出力レベルにより、ラジオアナウンサーは騒音による潜在的リスクにさらされる。測定された値は、長期間の平均音声スペクトルと音声レベル測定値に関する他の研究結果と相関していた。

Effect of electronic ANR and conventional hearing protectors on vehicle backup alarm detection in noise.

Casali JG, Hum Factors. 2004 Spring;46(1):1-10.

本実験では、監視作業を行っている12名の参加者に対して、一般的な受動型防音保護具(イヤマフ、フォーム型耳栓)の着用・能動型騒音減衰(ANR)ヘッドセットの着用・防音保護具なし(85dBのみ)の条件下で、85dBAおよび100dBAのピンクノイズおよびレッドノイズにより得られるバックアラームのマスキング閾(限界上昇法を用いた)を調査した。その結果、防音保護具群では、レッドノイズ(2.3~3.1dB)および100dBA(2.6~4.3dB)の条件下で、統計学的に有意な差が認められた。別のプロトコールにおける研究を裏付けるさらなる所見として、85dBAにおけるマスキング閾は防音保護具非装着時よりも装着時の方が有意に低い(3.2~4.4dB)ことがわかった。この結果は、比較的騒音レベルの低い場所で防音保護具を使用することは必要な職場の音声を聴取することの妨げになるという、多くの健聴労働者の考えに反論するものである。本研究の実際あるいは潜在的な活用法には、(a)シグナルの同定が重要な低周波バイアス騒音ばく露に対する適切な防音保護具の選定、(b)一部の産業騒音環境に対してANRを基本とした防音保護具の妥当性の獲得、が挙げられる。

造船所従業員のステレオ聴取者の聴力損失.

森忠繁,産業医学, 1981. 23(3): 206-215.

造船所従業員のステレオ聴取と聴力損失との関係についてアンケート調査を行った。ステレオ聴取者は調査対象の46%で、若年者ほどこの比率が高い。各年齢グループによる平均聴力損失は、1%レベルで有意差がある。ステレオ聴取者の聴力損失は、非聴取者の聴力損失より小さい。ステレオ聴取者の聴力損失は、聴取期間、音楽の種類間で、有意差が認められない。ステレオ聴取時間別の聴力損失は、有意差が認められないが、聴取頻度別の有意差が認められる。月に1~2回以上聴取する人は平均年齢が高く、聴力損失が大きい。

異常環境 音.

猪忠彦,臨床検査, 1990. 34(1): 61-67.

騒音の影響は、作業能率に対する影響から聴力障害まで心理的、生理的に多くのものがある。聴器に及ぼす影響には騒音に長期間ばく露され、しだいに進行する感音性難聴である騒音性難聴、ヘッドホン難聴、ロック・ディスコ難聴、音楽家の難聴などがある。また20Hz以下のきわめて振動数の少ない超低周波音公害も発生している。

子どもの健康と生活環境 II 物理的障害 3 騒音が子どもの健康に及ぼす影響.

川田智之,小児科, 2000. 41: 40-45.

騒音の健康影響を特に子どもを対象にして述べた。生活妨害の視点から、騒音問題は主観的認知としての「うるささ」が重要である。航空機騒音による学童への影響に関しては、聴力レベルには影響ないが、うるささの有訴率は有意に上昇する。航空機騒音が出生児体重を低下させる。また3歳児の身長が環境騒音の上昇に伴い、男女とも有意に低下する。騒音地区で学力が低いグループは、学年進行に伴いさらに低下する。ヘッドホン難聴に関しては、結果の一致が得られていない。

Improvement of occupational nose-induced temporary threshold shift by active noise control earmuff and bone conduction microphone.

Horie S, J Occup Health 44, 414-420 (2002)

騒音下で労働者がコミュニケーションをとる必要がある実際の環境下で、イヤマフと骨導マイクを試験した。26~46歳の経験のある男性鉄鋼製造労働者13人を対象とした。92~103dBAの騒音作業環境で4時間作業した。イヤマフと骨導マイク、一方の耳にイヤホン、他方の耳に耳栓をし、マイクロホンを使用する従来法と比較した。4kHzにおける一時的聴力損失(TTS)は減少し、測定した全周波数でTTSを示す労働者の数は減少した。イヤマフについては多数の労働者が、声の明瞭度はイヤホンより優れているとしたが、装置が重いため全体的には良い評価ではなかった。イヤマフは改善を要するが、防音保護具として期待できる。

職業病 金融業者の耳鳴りと難聴.

清藤直人,医道の日本, 2009. 68(4): 43-47.

仕事による影響で耳鳴・突発性難聴が発症し、それに対する治療で客観的にも改善が見込まれた1例を報告した。症例は、男性35歳 金融業。主訴は、耳鳴と不眠で、金融関係の仕事をしており、パソコンを使いヘッドセット(イヤホンとマイクが一体化した音声入出力装置)を用いて、債務額を弁護士事務所と交渉する仕事であった。治療は、「Kiiko Style」で行い、治療8回目には難聴・耳鳴の苦痛もなくなった。