第28回騒音障害防止研究会(無事終了いたしました)

第28回騒音障害防止研究会
日 時:2023年11月17日(金)13:30~16:15

会 場:ふれあい会議室 田町No44(東京都港区芝5丁目32-9Ecs第5ビル5F)

※オンライン(Zoom)とのハイブリッド開催

一般口演

座長:永野 千景(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学)

  1. 手持動力工具を用いた作業における騒音個人ばく露測定の実際

〇永野 千景,中尾 由美,堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学)

近年,製造業では手持動力工具を用いた作業を行ったり,一人の作業者が複数の機器を操作したりすることが多い.一日の中で労働者が複数の騒音職場を移動して作業する場合や間欠騒音など,騒音の発生状況に変動が大きい場合,従来の定点における騒音測定では,作業者への実質的な騒音ばく露量を正しく評価できない.欧米では個人ばく露測定が作業者のリスク評価を行うために導入されており,サウンドレベルメータは,騒音対策のための音源調査や衝撃音の精密測定を行う場合に使用されている.「騒音障害防止のためのガイドライン」の令和5年4月20日改正を機に,日本でも作業者が手持動力工具を用いる場合など,騒音源が移動するような作業場では個人ばく露測定が推奨されるようになった.そこで,実際に手持動力工具を使用する騒音作業場で個人ばく露測定を行い,従来の定点における測定方法によるばく露量との比較および,その聴力への影響を報告した.

 

  1. 新JIS規格に準じた耳栓・耳覆い併用時の遮音性能測定

〇横山 栄,小林知尋(一般財団法人 小林理学研究所)

2023年4月に改訂された騒音障害防止のためのガイドラインの解説では,聴覚保護具の使用について,「非常に強烈な騒音に対しては耳栓と耳覆いとの併用が有効である」ことが明記された.しかしながら,耳栓と耳覆いを併用した場合の遮音性能については公表されているデータが少なく,N. Trompetteらの論文によれば,耳栓とイヤーマフを併用した場合でも,評価指標SNRによる遮音性能の増加分は単独装着時の性能が高い方の聴覚保護具に対し10 dB程度であり,周波数帯域によっては,併用による効果が非常に小さい結果が示されている.当研究所では,2020年に聴覚保護具の遮音性能測定法に関するJIS規格(JIS T 8161-1)が改定されたのを機に,無響室でJIS規格に準じた測定用システムを構築しており,本報では,これにより耳栓と耳覆い併用時の遮音性能測定を実施した結果を報告した.

 

  1. 3. 騒音環境下で耳栓を装着した際の語音に対する可聴閾値の検討

〇日比野 浩之1,永野 千景2,堀江 正知2,井上 仁郎31㈱丸井グループ ウェルビーイング推進部,2産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学,3井上音響リサーチ)

騒音職場に従事する労働者は騒音性難聴のリスクがあり,耳栓等による聴覚保護と作業指示や危険警告等の必要な音声聴取とを両立させることが安全衛生管理として求められる.そこで,騒音環境下で耳栓を装着した際の語音明瞭度を非装着時と比較した.健聴者41人を対象に背景騒音がない条件及び80,85,90dB(A)のピンクノイズ下で2種類の耳栓を装着させ,日本語の2音節単語に対する90%語音明瞭度を達成するのに必要な音圧レベルを測定した.背景騒音下における90%語音明瞭度を達成するのに必要な音圧レベルを耳栓未装着と装着時で比較したところ,有意差を認めなかった.これは,背景騒音下で耳栓を装着した場合,語音に対する聴取妨害は耳栓によるものより背景騒音によるものの影響の方が大きくなり,耳栓の遮音特性の影響が相対的に小さくなるので,耳栓未装着時と比較して90%語音明瞭度を達成するのに必要な音圧レベルに有意差がなくなったと考えた.よって,背景騒音下における耳栓の装着は音声コミュニケーションの阻害要因とならないことが分かった.

 

  1. 音声伝播経路が異なる収音デバイスを高騒音下で使用した際の語音明瞭度の比較

〇中尾 由美1,2,永野 千景2,門脇 正天3,井上 仁郎4,堀江 正知2(1㈱中尾労働衛生コンサルタント事務所ワーク&ヘルス,2産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学,3ENEOS㈱ 中央技術研究所 技術戦略室 事業創出推進グループ,4井上音響リサーチ)

 

騒音作業場では労働者の騒音性難聴防止のため耳栓等の聴覚保護具を使用することが推奨されている.一方,業務遂行や事故防止のために必要な音声の聴取も重要であり,これらを両立させるためのツールが求められている.現在,「通信機能付き騒音低減デバイス」が上市されており,音声が体内組織を伝導するもの(以下,体内組織デバイス)と気導のもの(以下,気導デバイス)がある.本研究では,これらのデバイスを騒音環境下で使用した際の3音節単語に対する語音了解閾値を比較した.背景騒音があり,イヤーマフを装着している条件では体内組織デバイスの方が気導デバイスより有意に語音了解閾値が低かった(右耳).気導デバイスはイヤーマフによって,いずれの音も遮音されたが,体内組織デバイス使用においては,背景騒音はイヤーマフで遮音されたが,発話音声はイヤーマフの影響を受けずに体内組織を介して収音されたためと考えた.

懇親会

懇親会は最少催行人数に達しなかったため中止いたしました。

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